2014年8月24日日曜日

意外ではないイガイの実力

 まわりの人が美味しいって言ってるけど、えっ!何これ?意外に美味しくないじゃんってことってありますよね。皆んなの舌はどうかしてるんじゃない?って思うこと。そしてホンモノの舌を持っているのは自分だけだど一人ほくそ笑んじゃう。
 逆に、まわりが騒いでいないのに、これ意外と美味しいじゃん。ってこともありますよね。そんな時も、この美味しさを感じられるホンモノの舌を持っているのは自分だけだど一人ほくそ笑んじゃうんですね。
 まぁ結局のところ、美味しくても、それほど美味しくなくても優越感と自己満足にどっぷりと浸る訳なんですが、誰もが素直に美味い!というものも世の中にはあるんですね。
 意外と美味しいね。だとか、意外に美味しくないね。とかの言葉を一切受け付けないものが。
 そんなものどこにあるのかって?足元を見てください。そう。地面に生えているんです。
まぁ地面と言っても海の中だし、それに生えているというか、海底にへばり付いているんで、なかなかお目にかかれないんですが、ムール貝の仲間です。えっ?ムール貝なんてって?やっぱり意外でした?
 けど、ムール貝と言っても、そのおばけなんです。おばけ。
 えー、おばけと言ってもおどろおどろしいじゃなくて、もんの凄く大きいって方の意味です。

海底の岩にへばりついてます
   それでですね、その名も意外や意外!イガイ。誰がなんと言おうと本名イガイ。それイガイにありません。
 ところでムール貝のおばけって言ったんですが、普通のムール貝は、大きくても殻の長いところで10㎝くらい。だいたいは5㎝程度。それに比べるとイガイは20㎝を超えるものもあります。大人っでも手のひらに余るくらいに大きくなるんですね。ほら、おばけでしょ!ムール貝なんてかわいいもんです。
でかい!でしょう?
   それでは頂いてみましょう。
 たぶん全国津々浦々でいろんな食べ方があるんだと思うんですが、イガイの実力を素直に味わえる、すなわち誰もが美味いという二つの食べ方をご紹介しましょう。
 秋田でイガイは素潜りで獲られているので、必然的に旬は夏なんですが、同じく旬の夏ナスと合わせた味噌汁がその一つです。

夏はこれです!
   では、熱々のところを一口。フーフーズーズー。ゴクリゴクリ。うぉーあぁー甘い!甘い!
 まずですねイガイ本体から浸み出してきた奥の深い甘さに、うーぐー!と喉が勝手に唸ります。
 この甘さはなんと形容すれば良いのか。シジミのみそ汁の甘さを5倍濃縮にして多少の野性味と塩味を加えた感じとでも言いましょうか。
とにかく深いコクがあって五臓六腑に染み渡る甘さですね。
 それに夏ナスのさっぱりした青い甘さと、そのスポンジのような実に吸収されたイガイのダシの甘さがハーモニーを奏でます。イガイのみそ汁には夏ナスに限りますね。
  試したことはないのですが、ジャガイモなんかだときっとお互いよそよそしくなって決してソリが合わないはずだ。
  ダシの甘さをじんわりと味わったなら大きくぷっくりと充実した身をいただきましょう。
  それこそイガイの五臓六腑を丸ごと頬張ることになるので迫力の食べ応えです。身の美味しさはなんと形容すれば良いのか。ホタテのウロに歯応えと甘み、それに旨味を加えた状態を想像してください。そこにほんのちょっぴりサザエのシッボのえぐ味を足してみてください。そんな美味しさです。
  それにですね貝柱は小指の先っぽほどの大きさでありながら、甘さは負けますがホタテの干し貝柱のよう。噛むごとに柱は何本にも細かく分割されていきますが、いつまでも噛んでいたい。そんな美味しさです。
これは焼きイガイ
イガイカレー
   さて、二つめの食べ方ですが、蒸しイガイです。蒸し器に入れて蒸すだけ。閉じた二枚の貝殻が開いたら出来上がり。貝殻の開き具合によってはダシが漏れ出してしまうのがいささか具合が悪いのですが、完全ボイル状態のみそ汁とは違って、やや甘さも弾力も弱いのですが、生に近い野性味の濃いイガイの旨さが味わえます。いずれにしろイガイは「意外」なんて枕詞は不要な実力を持っているのですね。

蒸しイガイ
つくづく似ている(らしい)
   ところでイガイというのは日本全国共通の名前なのですが「あるモノ」に似ているので「ニタリ貝」と呼ぶこともあります。
 本当につくづく「あるモノ」にそっくりなのです。
 実を言えば今回のお話も、そちら方面へ発展させていきたい衝動に幾度もかられたのですが、それでも低きに流れることなく、無事ここまで辿り着くことが出来ました。
 何が一番意外かと言えば、そんな自分が意外でありました。