2013年6月28日金曜日

イワシ東西対決

  5月下旬から6月にかけて新緑の山肌にひときわ映える桃色の花がある。秋田ではイワシ花と呼ぶ。その名のとおり、この花が咲く頃、秋田の海ではイワシが獲れ始める。

イワシ花 男鹿半島にて
 同じ頃、田植えも始まるので田植え花と呼ぶ地域もあるようだ。またイワシも田植えも関係なく、ガジャの花とも呼ばれる。本名はタニウツギというが、その昔、亡くなった人に持たせる杖にしたり、棺桶の蓋を留める木釘にも使われたりしたことから、つい、飾りたくなるほど可憐な花なのであるが、家に持ち込んではいけないなど、地域によってはとても忌み嫌われている花でもあるようだ。

本名は“タニウツギ”です。 
男鹿の大謀網(大型定置網)にて 6月13日
  さて今回はイワシ。そんなイワシ花が満開の頃、秋田市内の市場で皿盛りのイワシに出会った。店頭のオヤジさんに、何処で獲れたかを尋ねてみる。すると返ってきた答えは「千葉産だよ〜」。イワシ花も咲いたので、秋田のイワシも揚がってるだろうと期待してきたのである。ならばと思い「秋田のは揚がってないの?」と聞くと、オヤジさん曰く「秋田のイワシは駄目だ〜!脂も無いし美味くないもの。もう扱わないことにしたんだ」とのこと。そして、続けて「千葉のは脂ものって美味いよ。刺身でも塩焼きでも美味いよ。秋田のイワシと全然違うよ」とも。

千葉産マイワシ ぽっちゃり系 肥満度11.9
  このオヤジさん、もしかして千葉生まれか?とも思いながらも、それほどまでに違うものか、ならば比べてみようと考えて一皿購入する。さっそく自宅へ帰って、まな板に寝かせたイワシの身体測定をする。身長21cm、体重110g、ウエスト11cm。肥満度は11.9(人間の場合、肥満度=体重÷(身長×身長)だが、魚の場合は×身長がもうひとつ増えて、体重を身長の3乗で割る)。
 本当は刺身でも食べ比べてみたかったのだが、諸般の事情により、塩焼きで比較することにした。グリルの中からは、ジュッ!ジュ!ジュ、ジュ〜と脂がしたたり落ちて焦げるサンマでお馴染みの快音が断続的に聞こえてくる。覗いてみると、薄皮も水蒸気にあおられてフツフツと踊っているのが分かる。確かに脂のノリは良いようだ。そして確かに美味い。旬の時期のサンマのように口のまわりまでツルツルテカテカになるほどの脂ではないが、肉質は柔らかくしっとりとして美味い。

ジュッ!ジュ!ジュ、ジュ〜と鳴き続けた千葉のぽっちゃり系
一方、秋田産マイワシ。千葉産に遅れること4日ほどして入手。同じようにまな板に寝てもらい身体測定。身長24cm、体重100g、ウエスト10cm。体格はポッチャリ系の千葉産に比べると、スレンダー系といえよう。そして肥満度は7.2。

秋田産 肥満度7.2のスレンダー
  食べ比べするべく塩焼きにしてみるが、スレンダー系はポッチャリ系のようには声を出さないのである。ジュ、ジュ〜がないのだ。オヤジさんが言うように、秋田産に脂がのっていないのは確かなようだ。けれども贔屓目にみるせいか、決して不味いとは思わない。脂の少ない牛のもも肉のような印象。
まったく声を出さなかったスレンダー
ただ、どうしても、2人を、いや2匹を並べられると、くやしいかな、男の性か、やはり千葉のポッチャリ系に惹かれてしまうものがある。それならば、我が秋田のスレンダー系を自分好みに教育してみようと思い立つ。 

スレンダー系を教育中
五つ星の七つ星
 そこで佃煮にしてあげることにした。圧力鍋は使わずに酒、砂糖、醤油を同量合わせた調味液に、生姜を加えて、コトコトと2時間ほど煮詰める。少し骨っぽく、薄味に仕上がりになったが、十分にイケるではないかスレンダー。酒のつまみにもイケるし、ご飯のおかずにもバッチリだ。五つ星をあげよう。
 例のオヤジさんに一言、「秋田のイワシは駄目だ〜!もう扱わないことにしたんだ」は取り消しなさい!。それだけはイワシて。