2013年6月22日土曜日

釘煮初体験

 先月5月初旬に話はさかのぼる(すみません更新が遅くて・・・)。
 とある日の夕方、イカナゴを頂いた。サイズは全長7cmほどなので、小女子(コウナゴ)と呼ばれる大きさだが、もちろん1匹ではない。直径25cm、深さ7.5cmのボールにたっぷり山盛り2つ分もあって、合わせて千匹は居そうだ。そんなに小さいものを、そんなにたくさん可哀そう、自然に優しくない。などと言われそうだが、今さら海に放してあげても、ぷかぷかと浮かぶだけで、決して浮かばれまい。それにそんなことを言う人は霞でも食べてなさいとも思う。


 さて本題。たくさん頂いたはいいけれども、もうすぐ晩飯の時間だし、どうしたものかと買ったばかりのiPadmini16GWi-Fiモデルシルバー&ホワイトを片手に、イカナゴを使ったレシピを検索。ヒットしたうちで食指が動いたレシピは、次の三つ。すなわち、天ぷらに、卵とじ、それに釘煮。実は食指が動いたと言うよりも、前者2つは簡単に出来そうなのと、釘煮は、前々からイカナゴを手にしたら必ず作ってみたいと心密かに思っていたのである。それに釘煮は保存も効くだろうし、千匹ものイカナゴ達をさばくのにはバッチリだ。
 天ぷらと卵とじは、自己流でも出来そうだ。しかし、釘煮はやはり本場の作り方に従うのが、初心者としての礼儀であろうと考えて、さらに検索すると、数ある釘煮が紹介されてあるホームページの中から、瀬戸内海の明石浦漁協、富永課長直伝だという「失敗しない生イカナゴの釘煮の作り方」にたどり着いた。「直伝」と「失敗しない」という二つの言葉に心を強く惹かれた初心者は、さっそく富永流の門を叩き、勝手に弟子入りしてしまう。
 そしてiPadminiの7.9インチの中の師匠に向かって深々と一礼。 深呼吸をして精神統一する。
 では、師匠、こっちは素人なんで、お手柔らかにお願いします。ということで、台所に入り、iPadminiを片手に師匠が門外不出を条件に教えるところの材料を準備する。さて、富永師匠は、醤油、たまり醤油、ザラメ、みりん、酒、土生姜を準備しろと言うのであるが、果たして、我が家には、たまり醤油とザラメが無かった。そもそもたまり醤油って何?と素人はいきなり大混乱してしまう。
今さら買いに出るのも面倒だ。それにそんな大事なことは弟子入りする前に言って欲しいもんだとiPadminiの師匠に毒づくが、師匠は黙ったままである。
 入門したての弟子が、流派のしきたりに背くのは、即、破門を言いつけられる行為なのであろうけれども、師匠が黙っているのを良いことに、たまり醤油を普通の醤油に、ザラメは白砂糖に変えてしまう。
醤油200cc、酒50cc、みりん150cc、白砂糖300g
煮汁をしっかりと煮立てて、そこにパラパラとイカナゴを入れていく。師匠によれば、この「パラパラ」がとても重要な第一のポイントで、一気にドサッと入れてしまうと煮汁が均等に行き渡らないのだそうだ。ここは師匠のいいつけを忠実に守ることにして、手のひらにイカナゴをすくっては入れ、すくっては入れを繰り返す。このときに右手を使うか、左手を使うかで流派が違うそうだ(ウソです)。 

右手を使いパラパラと
 そして、皮付きの千切り生姜を散らばして、少しアクを取り除いたあとは、アルミホイルの落し蓋をして、強火で20分。
 ここからが第二のポイント。絶対に箸でかき混ぜたりしてはいけない。
 素人はどうしても、ちゃんと煮えているのだろうかとか、焦げ付いたりしないだろうかとか、心配になり、つい手を入れたくなってしまうが、iPadminiの中の釘煮の師匠が釘を刺してくるので、ここは正確に20分間、じっと我慢することにする。

もう少しで20分
 そして、煮汁が見えにくくなってきたら中火で5分、そして、ほとんど煮汁が見えなくなったら、ごく弱火で5分。都合30分ほど煮詰めたら出来上がり。ただし、最後の10分間は鍋の前から離れてはいけないそうだ。あとは、火からおろして、鍋ごと冷ましたら、ざるにあけて完成。2寸の釘煮が山盛り出来上がった。

だいたい二寸程度の釘
 生姜がとてもいい味を出してますね。と言っても、俺は生姜だ、という自己主張の強い味ではなく、少しだけ出てくる魚のアクだけをマスクして、イカナゴの美味しさを引き出している。ともすれば、魚の佃煮は、甘ったるく、くどい感じがするが、今回は、それが無い。いくらでも食べられるような気がする。さすが師匠、脱帽です。

てんぷらも新鮮
 ところで、瀬戸内海地方では、春先のイカナゴ解禁に合わせて、店頭に釘煮用の鍋が並ぶのだそうだ。なんと郷土色豊かな素晴らしい魚食文化であろう。と、深く感心していたら、我が秋田にもあるではないか。例年11月から12月にかけてのハタハタ漁期、店頭には、ハタハタ寿司(飯寿司)を漬けるための樽が並ぶのである。それにイカナゴもハタハタも魚醤の材料だ。それぞれ「イカナゴ醤油(香川県や瀬戸内)」、「しょっつる(秋田)」と呼ばれる。これに「いしる(石川県)」を加えて、日本三大魚醤になる。
 さて、釘煮はいくらでも食べられると言ったが、やはり千匹は多い。翌日、職場の同僚におすそ分けする。果たして、同僚の反応は? 糠に釘にようにはならなかった。


【本日のレシピ】

次のホームページを参考に、「たまり醤油」は「醤油」、「ザラメ」は「白砂糖」にしました。

http://www.eonet.ne.jp/~namadu/ikanago.htm